ふるさぽレビュー:佐々木俊尚氏(作家・ジャーナリスト)

先端的な遊動生活を地方の側から受け入れ、支援する取り組みとして。

作家・ジャーナリスト 佐々木俊尚さん

私はここ数年、美浜町と東京、長野という3つの拠点間を移動しながら暮らす生活をしています。その中で見えてきたのは、今後の都市と地方の関係の未来は「移動生活者」にこそあるというビジョン。

昭和の時代には人々は地方から都市へと「上京」し、そして最近は都市から地方へと「移住」することがブームになってきています。しかし向かう方向はどうあれ、これらはいずれも定住生活を前提として考えられている概念です。

しかし人間はもともとは移動性の動物であり、狩猟採集の時代には獲物を追って住まいを転々と変更していくような生活を送っていました。人類学ではこれを「遊動」と言います。しかしその後人類は定住生活に移り、農耕を発明して大規模集落をつくるようになり、さらに産業革命以降は都市に人口を集中させる方向へと進んできました。

これが今、何千年かぶりに反転しようとしているのではないかと私は考えています。情報通信テクノロジーの進化で、どこにいてもできる仕事が増え、今後は自動運転車の普及で移動のコストも低下していくでしょう。そういう中で固定された定住生活ではなく、再び遊動生活に人々は戻っていく。

アドレスホッパーと呼ばれる固定した住居を持たない若者たちも現れてきました。また全国各地のゲストハウスを月額固定料金で泊まり放題になるサービスを展開するADDressという企業も注目を集めています。この流れが進んでいく中で、地方の街もそこに最適化していく方向を模索しなければならない時期がやってきています。

ふるさとサポート福井の活動は、その先端的な遊動生活を地方の側から受け入れ、支援する先鞭となりつつあります。アドレスホッパーやADDressとも交流し、ADDressの拠点は美浜町にもオープンしました。地域再生大賞受賞という素晴らしい冠をいただいて、ふるさとサポート福井の仲間たちは今後もこの道を今後も突き進んでいくことでしょう。私もそれを支えていきたいと思います。