『空き家予備軍』の対策について
空き家 for LINE β版

1.空き家予備軍とは

高齢者単身世帯の家

『空き家予備軍』とは、65歳以上の高齢者単身世帯が現在住む戸建住宅とマンションの持ち家を指します。

大都市に空き家の「予備軍」が大量に潜んでいる。65歳以上の高齢者だけが住む戸建てとマンションの持ち家が東京、大阪、名古屋の三大都市圏に合計336万戸あり、同圏内の持ち家全体の2割強に達することがわかった。
(日本経済新聞 2018年6月22日 より)

きたるべき大量相続時代に向けて、現時点で高齢者のみの世帯が住む住宅を「空き家予備軍」と捉え、空き家発生の予防に向けた取り組みも先送りしてはいけません。
(野澤千絵著 老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する より)

2.空き家予備軍が注目される理由

今ある空き家の数だけで空き家問題を考えるのは危険

総務省の住宅・土地統計調査(速報値)によると、平成30年10月1日現在の空き家率は前回調査したものより0.1ポイント上昇の13.6パーセントとなりました。これを見ると、空き家特措法の施行によって増加はある程度落ち着いたと感じられるかも知れません。しかし、単身高齢者世帯の住宅であるいわゆる「空き家予備軍」の多くがゆくゆくは空き家になっていくと未来予想をすると、これからの空き家問題を語る際には、いまある空き家だけではなく、これから空き家になると予想される「空き家予備軍」への対応が必須であると私たちは考えています。

空き家川上川下理論について

私たちふるさぽは、多くの自治体のみなさんに、「空き家予備軍」への対応が空き家問題対策の大きな鍵となることを理解していただくために、“空き家川上川下理論”としてお伝えしてきました(下図)。

空き家川上川下理論

いま空き家問題としてクローズアップされているのは、空き家として利用不可能ないわゆる「特定空き家」と言われているもの。これは図で行くと左手(川下)の物に当たります。川は上流から下流に流れていきます。空き家の経過を川の流れに見立てています。空き家になるかもしれないものが川でいう源流の部分です。空き家になってしまった状態からこの川の流れが始まります。どんどん下流に流されいつの間にか川下へと特定空き家にならないようにするためには、川上の部分でつまり空き家になる前もしくは、空き家になった早期の時点で、何らかの決断をしないといけない状態になります。
川の流れは待ってくれません。そう言う意味でも川上での予防策つまり「空き家予備軍」の対策こそが、空き家問題の根本的な解決につながっていきます。

3.空き家予備軍に関する特徴と課題

空き家や所有者の特徴

  • 所有者への直接的なアプローチは決断を鈍らせる
  • 空き家予備軍は空き家数より数は多い傾向
  • 空き家の寿命は著しく短い

空き家予備軍への対策

  • 所有者自身で決断を促す対策
  • 所有者の満足度を上げる対策
  • 影響力のある人たちへ正しい空き家の情報の啓蒙
  • 地域力を活かして空き家予備軍対策の仕組みの構築
  • 個別対応できる自治体やNPOなどの組織連携

4.ふるさぽとしての空き家予備軍対策は?

所有者の早期決断がカギ

所有者向けの決断への個別サポート

所有者のみなさんは、ご自身が相続等で取得された空き家に関して、漠然とした不安と心配を抱えています。そうした状況の中で、ご自身から相談に来られる方はごく少数です。空き家バンクに登録するにしても、その決断までにいろいろな不安要素が隠されています。

まず、現実的に最も切実な「お金に関する問題」をクリアにしています。これは『空き家おねだんシミュレーションソフト』を使いながら、売買賃貸、解体費用、登記税金などを、場面に応じて試算を行なっていただけます。
次には『空き家決断シート』を利用しながら、行く末のパターンをひとつずつ丁寧に所有者または所有者の家族が一番いい選択ができるような決断へ導いていきます。
最後に決断後の所有者の気持ちの整理として、家への思い出や歴史を住みついでもらう方への手紙(『家の思い出レター』)として残していただいています。

今すぐ決断をしなくてもよいのですが、できるだけ詳しく現状を把握しながら、いつか来る決断のときのために心の準備をしていただくきっかけを作らせていただいています。

地域の連携協力体制

決断ツールを使った地域団体や集落への講座

空き家は個人の所有物であるために、人間関係が決断の大きなポイントになります。まだ決断をしていない所有者に対して他人がアドバイスをしても、人間関係が形成されていない状態では決断に時間がかかります。となると、すでに人間関係を構築されている方にその役割を担っていただくことが必要ではないかと考え、そのために各種団体に空き家の現状とこれからの未来、そして空き家予備軍の存在が大きく空き家のこれからに関わって来るという講座を開きました。さらに「空き家決断シート」を使いながらご自身のお住まいの未来をイメージしていただき、空き家に関するヒヤリング技術を習得していただいています。

具体的には、美浜町社会福祉協議会への講習会を実施しました。詳しくは地元ケーブルテレビ MMネットで放送されたビデオをご覧ください。

情報収集、情報整理のバックアップ体制

「ふるサポーター」のヒヤリング情報収集

ふるさぽでは、地域の空き家の情報提供や所有者への助言や移住者のサポートケアを目的としたチーム「ふるサポーター」の登録を積極的に行なっています。空き家の所有者は近所の人や友達、親戚の声に左右されるという現場での実体験から、所有者に正しい理解をしていただくために、所有者直接ではなく周りからの理解が所有者の決断に繋がっていくという流れを大切にしています。

ふるさぽスタッフがふるサポーターにヒヤリングに出向き、空き家の情報提供のヒヤリングを行なっています。現在315人のふるサポーター、5年後には1200人を目指して動いています。

行政とのタイアップ

情報共有と地域との関係性強化

ふるさぽは、平成28年11月21日に美浜町と「美浜町空家等対策に関する連携協定」を結んでいます。協定を結ぶことにより、行政が所有する空き家の情報を共有できるようになりました。情報共有により空き家所有者との連絡や状況把握がスムーズにでき、いち早く所有者にアクセスできるようになりました。あわせて行政とつながることにより、行政区のみなさんへの情報発信やコミュニケーションも円滑になりました。

空き家マッチングツールの開発

5.私たちが全国のみなさんにお手伝いできること