きっとある一定の法則はあるはず、そんな思いを持ちながら、空き家マッチングを10年以上続けてきた。
そしてある時、ふとこれがそうなのかと気づいた。
ふるさぽの理念として掲げている「空き家は壊さず活かす」というテーマ
これを掘り下げた結果そこに行き着いたので、現場試行錯誤の結果と言ってもよい。
ただこれもまだ途中段階かもしれないから、メソッドと言いながら、今後も箇条書きに追記されるのはご承知いただきたい。
ふるさぽ空き家掘り起こしメソッド
- 川上に注目
- 早期決断をイメージ
- 地域の広がりに注力する
これらの項目を挙げたがこれらは独立しているわけでなく、全てつながっている。なので順番通りの思考や取り組みが必要だと考えている。行動としては、3の地域の広がりを意識するだけでも良いのだが、これは一体何のためにやっているのか、実はここが大事なポイントでもある。
だからこのメソッドは順に理解してもらうのが良いと考える。
1.川上に注目
空き家の取り組みに、川上・川下など意識される方はそう多くない。
川上・川下とは空き家の取り組みに対する時間経過を川に例えている。川下の取り組みとは、放置されている空き家をなんとか改修して流通させるような取り組み。川上の取り組みとは、空き家になった段階でお金をかけずにすぐに流通できるように、所有者の早期決断を促すような取り組みである。
報道され、対策を議論しているほとんどが川下のテーマのみだ。
空き家は古くて朽ちてどうしようもないというイメージが先行するため、お金をかけてリノベーションをしようという方も多いし、DIYでやってみようという方もいる。報道する側は、これはいいぞと。こう言う人が多くなれば、空き家問題は片付くのではないかというイメージを持っているのだろう。
そう言う人も確かにいて、それで空き家が救われた事例もある。ただそれは、空き家の母体数から考えると、氷山の一角に過ぎないといっても過言ではない。
さらに言うならば、「朽ちてしまった空き家を何とかしよう」という目線は、全て川下の話であると言うことをまずは認識していただく必要がある。空き家は古くて当たり前という常識を、まずは取っ払うことが大事だ。
さらには次の項目とも被るが、空き家は個人の所有物で他人がどうこう言う話でもないし、所有者の決断待ちで、放置されるのが当たり前という認識もいつからか常識になってしまっているのかもしれない。
そう言う意味でも、空き家の常識をまずは払拭し、川下から川上に目線を移動してみようというのが第一のメソッドだ。
2.早期決断をイメージする
空き家マッチングで大切なことは1で示したように、自身の常識を捨てるということから始まる。目線を川下から川上に向けてみると、次に見えてくるのは空き家予備軍の存在だ。川上の取り組みの鍵になるのは、空き家として生まれる湧水のタイミングと、さらにもっと地下にある地下水いわゆる空き家予備軍の存在だ。わが町福井県美浜町では空き家は320軒ほど存在していて、空き家予備軍といわれる65歳以上の単身高齢者世帯は690世帯を超える。福井県は持ち家率が70%を超えるので多くの予備軍世帯が空き家になることは容易に想像できる。
理想としては、湧水として生まれてきた段階で流通に出るのを望んでいるのだが、そう簡単にはいかない。流通に出る前にまずは所有者の決断が必要。
実は、地下水として潜んでいる段階で、決断に向けての準備が必要となる。大事なのはここからだ。その決断のパターンは人それぞれ、家それぞれに違う。パターン化するのは難しい。だから外部のものが騒げば騒ぐほど、決断が遠のくことも経験上わかっている。
では、どうすればよいか。それはイメージすることだ。その家族と家の関係性をしっかりヒヤリングして、どうしたらこの家は気持ちよく決断できるだろうかと、とにかくイメージすることだ。それも複数イメージ化することによって道筋が大体みえてくる。
話は少し飛ぶが、経営の神様松下幸之助氏のこんな名言がある
「無理に売るな。客の好むものを売るな。客のためになるものを売れ。」
実はこれが空き家の所有者の早期決断にぴったりの言葉である。
空き家に当てはめてみると
「決断は無理にすすめるな。所有者の好む方法をすすめるな。所有者のためになる決断をすすめろ。」となる。
これを実行するには、まずは所有者が手放せてよかったと言ってもらえる、そんな決断イメージを持つことが大事である。
3.地域の広がりに注力する
1、2ではとにかくイメージすること、頭の中の常識をなくし想像を膨らませ、所有者その家族の行く末をイメージする。では実際に行動に移すにはどうしたらいいか。直接所有者に決断を促したらいいのではないかと言う声も聞こえてきそうだが、実はそれは得策ではない。無理に決断をすすめるなと前段でお伝えしたが、空き家掘り起こしに一番禁物なのが所有者直接交渉だ。所有者の決断にはほど遠い行為だと思われそうだが、実は空き家が存在する地域から攻めていくことが一番近道となる。急がば回れという言葉がぴったりだ。
私たちの最終ゴールは空き家で困らない社会であるが、それを現実化するための指標として、地元のおばちゃんたちの日常会話で「空き家は早く決めたほうがええよ」と言う言葉が自然に出てきたら一定の効果が出たとみてよい。
近所に空き家が増えるとそこに住んでいる人はとても迷惑する。その当事者に自分はならないという自信を誰もが持っている。しかし当事者になった瞬間過去の自分が迷惑を受けたことはもう忘れてしまったりする。こんな繰り返しでは早期決断は生まれない。どこかでそれにピリオドを打たなければならない。そのためには当事者になる前に、正しい空き家の理解、つまり「空き家は放置せず、早めに行く末を決めておく」これをどれだけ地域に浸透させるか、地域でどれだけ広げられるかここが実は鍵となるわけだ。
これがふるさぽ流空き家掘り起こしメソッドだ。この思考にならなければ、今もそしてこれからも増え続ける空き家に歯止めはかからないだろう。